「よし、今日はあの崩れかけた塔跡だ。噂じゃ地下に何かあるらしいぞ」
ラーンが、イシェの持ってきた地図を広げながら、目を輝かせた。イシェは眉間に皺を寄せ、地図を指でなぞるように言った。
「またも荒れ果てた場所か。危険すぎるだろう。それにあの塔跡はヴォルダンの辺境警備隊が頻繁に巡回しているはずだ」
ラーンはイシェの言葉を無視して、剣を手に取り始めた。
「そんなこと気にすんな！俺たちにはテルヘルさんがいるんだぞ！あの人ならきっと安全な方法で遺跡の中に入れるって！」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後ろに続くことにした。
テルヘルが彼らの前に立っていた。黒曜石のように輝く瞳は、まるで火を宿すように燃えていた。
「準備はいいか？今日はヴォルダンに一つ教訓を与えよう」
テルヘルの言葉には、冷酷な決意が込められていた。イシェはラーンと目を合わせ、互いに小さく頷き合った。
廃墟となった塔跡の入り口に近づくと、ヴォルダンの兵士たちが警備をしていた。テルヘルは影に身を隠し、手招きをした。ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い、兵士たちの背後から忍び寄った。
「あの遺跡にはヴォルダンが何年も前から目を付けているはずだ。そこに眠る遺物こそ、俺たちが復讐を果たすための鍵となる」
テルヘルはそう呟きながら、兵士たちの動きを鋭い目で観察していた。ラーンの背後からイシェがささやいた。
「本当にヴォルダンに何かあったのか？」
イシェはテルヘルの言葉の裏に何か別のものを感じ取っていた。しかし、ラーンは何も聞かずに、テルヘルに従い続けることに固執していた。
「もちろん、大穴を掘り当てるためだ」
ラーンはそう言い聞かせながら、塔跡の入り口へと歩みを進めた。