「準備はいいか?」
ラーンの粗い声が響き渡る。イシェは Toolkit を整理しながら小さく頷いた。テルヘルはすでに遺跡の入り口に立っていた。薄暗い洞窟口からは、冷気と共に埃っぽい風が吹き出していた。
「よし、行こう。」
テルヘルが先導し、三人は廃墟へと足を踏み入れた。足元には崩れかけた石畳が広がり、壁には苔むした石造りの彫刻が歪んで残っていた。かつて栄華を誇った建物は、今は時間の経過とともに朽ち果てようとしていた。
「ここって、何だったんだっけ?」
ラーンがぼそっと尋ねた。イシェは古い資料を頼りに説明する。
「ここはかつて、エンノル連合の中でも最も繁栄した都市の一つだったらしい。しかし、何らかの原因で放棄されたと記録されている。詳しい理由は不明だ。」
イシェの言葉に、ラーンは少しだけ顔を曇らせ、テルヘルは深く沈黙していた。三人は廃墟の中を慎重に進み、崩れた柱や天井から垂れ下がった蔦を避けながら進んでいった。
「おい、ここには何かあるぞ!」
ラーンの声が響き渡る。彼は崩れた壁の奥にある小さな部屋を発見した。部屋の中には、埃をかぶった木箱が置かれていた。
「これは…」
イシェが慎重に箱を開ける。中には、金貨や宝石といった財宝ではなく、古びた羊皮紙の巻物が入っていた。
「何だこれ?」
ラーンが眉間にしわを寄せて言った。テルヘルは巻物を手に取り、目を細めて読み始めた。
「これは…古代の呪文だ。」
テルヘルの声には、どこかぞっとするような緊張感が含まれていた。
「呪文って?まさか…」
ラーンの言葉は途絶えた。廃墟に漂う不気味な空気の中で、三人の心には不安が忍び寄る。