「おいラーン、あの石碑には何か書いてあるぞ!」イシェの鋭い声が響いた。ラーンの視線は、埃っぽい遺跡内部の奥まった場所に置かれた石碑に向けられた。確かに、そこには複雑な文様が刻まれていた。
「なんだこれは…」ラーンが近づき、指で文字をなぞると、イシェが顔をしかめた。「古代語か。俺には解読できない」
「待てよ…」テルヘルが近づき、石碑を見つめる。「この文様…どこかで見たことがあるような」彼女は眉間に皺を寄せながら、小さな革の袋から何やらを取り出した。「これだ!」
テルヘルは小さな銀の鏡を取り出し、石碑に映し当てた。すると、鏡に反射した光が石碑の表面を滑るように動き、まるでそこに隠された文字が浮かび上がるかのようだ。
「これは…!」イシェが息をのんだ。「古代ヴォルダンの秘文字だ。俺の父が研究していたものと同じだ…」
ラーンの表情が曇った。「ヴォルダンか…あの国には二度と戻らねえ」彼は、幼い頃にヴォルダンから逃れてきた庶子だった。両親はヴォルダンの貴族に仕える者たちだったが、何者かの陰謀により殺され、ラーンは奴隷として売られてしまったのだ。
「この石碑には、ヴォルダン帝国の秘宝に関する情報が記されているようだ」テルヘルは冷静に言った。「それが我々の目的だ。この情報を手に入れれば、ヴォルダンを打倒する鍵となる…」
イシェは少し戸惑った様子を見せた。「だが、ラーン…」
ラーンの視線は石碑から離れなかった。彼は過去を思い出しながらも、決意を固めた。「ヴォルダン…必ずお前に復讐を果たす」彼の目は、燃えるような闘志で輝いていた。