「おいラーン、あの石碑はどうだ？」イシェが指さすのは、苔むした石碑だった。刻まれた文字はほとんど消えかけていた。「うっすらと何か見えるぞ。古代語か？」ラーンの視線は石碑から離れず、「よし、見つけた！」と叫んだ。イシェは眉間に皺を寄せた。「またか…」。ラーンはいつもこうだ。遺跡に潜るたびに大発見だと騒ぎ立てるが、結局はただの欠けた壺や錆びた剣ばかり。
「何だ、イシェ？いい顔をしてるんじゃないぞ。きっと今回は違う！この石碑には何か秘密があるはずだ！」ラーンの目は輝いていた。「秘密か…」イシェはため息をつきながら石碑を調べ始めた。すると、石碑の表面にわずかに刻まれた模様が目に止まった。それは複雑な幾何学図形だった。「これは…」。イシェは驚きの声をあげた。「これって序列を表しているんじゃないのか？」
ラーンが「序列」という言葉の意味を理解するのは初めてだった。「序列？何それ？」イシェは説明を始めた。「古代文明では、あらゆる事物に序列をつけていたんだ。神々、人間、動物…そして物さえも。この図形は、その序列を示す鍵かもしれない」。ラーンの脳裏には、遺跡探索で出会った様々な遺物が浮かび上がった。
「もしかして…」ラーンは興奮気味に言った。「あの奇妙な機械も、あの謎の石像も…全てに序列があるのか？」イシェは頷いた。「そうかもしれない。そして、その序列を解き明かすことができれば、この遺跡の真実に辿り着けるかもしれない」。ラーンの心は高揚した。
「よし、イシェ！この石碑を解読してくれ！俺たちは歴史を変える大発見をするぞ！」イシェはラーンの熱意に押されながらも、冷静さを保った。「落ち着いて、ラーン。まずは図形の謎を解明する必要がある。焦るな」。二人は肩を並べて、石碑の謎に挑んだ。
テルヘルは遠くから二人の様子を見つめていた。彼女の目的は遺跡の秘密を解き明かすことではなく、ヴォルダンへの復讐だった。「序列」とは彼女にとって、力を示す手段に過ぎなかった。そして、その力は、あらゆるものを支配する鍵となる。