ビレーの tavern の薄暗い空気を切り裂くように、ラーンの豪快な笑い声が響き渡った。イシェは眉間にしわを寄せながら酒を一口飲み干した。
「またそんな大口叩いてるじゃないか… 」
「だってさ、今回は本当に違うんだって！あのテルヘルが言うんだから間違いないだろ？」
ラーンは目を輝かせながら、テーブルに広げた地図を指差した。テルヘルは今日もいつものように無表情でワインを傾けていた。彼女の冷たい視線は、ラーンの興奮を冷やすかのように鋭く光っていた。
「遺跡の奥深くにあるという…古代の王墓だそうだ。そこに眠る宝は想像を絶する価値があるらしい」
イシェは地図に目を落とす。確かに、ビレー周辺では見られないような複雑な構造を持つ遺跡が記されていた。しかし、その場所を示すには「危険区域」と赤く書き込まれた箇所からさらに奥へと続く迷宮のような通路が続く。「テルヘル…本当に大丈夫なのかしら？」
「心配するな、イシェ。私は何よりも安全を第一に考えている。それに…」テルヘルは冷たく微笑む。「今回の依頼は単なる遺跡探索ではない。ヴォルダンとの戦いのための情報収集でもあるのだ」
ラーンの興奮も少し冷めていった。テルヘルの目的を知ってから、彼ら三人は奇妙な関係性の中で行動を共にしていた。彼女がヴォルダンに抱く深い憎しみと復讐心は、ラーンには理解できないものだった。だが、イシェのように冷静に物事を見極めるタイプでもないラーンにとって、テルヘルはどこか頼りになる存在になっていた。
「よし！準備はいいぞ！」
ラーンの元気な声で tavern は再び活気に満ち溢れた。イシェは深くため息をつきながら立ち上がった。ラーンが夢見る大穴と、テルヘルが追う復讐。二つの異なる目的が絡み合い、彼らを危険な遺跡へと導く。そして、その背後には、誰にも明かされていない真実が隠されているのかもしれない。