ビレーの酒場「荒くれ者の巣」にはいつもより活気がない。ラーンがいつものように大笑いして杯を掲げても、イシェは眉間にしわを寄せ、テルヘルは静かに酒を傾けている。
「おい、イシェ、何だその顔?」
ラーンの問いかけにイシェはため息をついた。「あの遺跡、また調査許可が出ないんだって。ヴォルダンとの国境に近いからって理由で、執政官が凍結したらしい」
「なんだそれ!?」ラーンは怒ったように立ち上がった。「俺たちは遺跡を調査して金儲けする権利があるんだぞ!なんでそんな理不尽なことを…」
「 calm down, ラーン。」テルヘルが静かに言った。「怒っても仕方がない。今は状況が悪い。ヴォルダンとの緊張が高まっているから、執政官は慎重になっているんだ」
「でも…」ラーンの言葉は途絶えた。イシェの視線はテルヘルの顔に注がれていた。彼女はいつもより少し表情が硬い。
「何か知ってることがあるのか?」イシェが尋ねた。「ヴォルダンとの緊張が高まっている理由、遺跡調査を凍結する理由…。」
テルヘルはゆっくりと杯を置いた。「実は…」彼女は言葉を濁すように言った。「私の過去に、ヴォルダンに関するある秘密があるんだ。それは…」
ラーンとイシェは息をのんだ。テルヘルの言葉はゆっくりと、しかし確実に、彼らの心を揺さぶるものだった。彼女の過去、そしてヴォルダンの陰謀。それはまるで、幽囚された真実の扉を開ける鍵のようだった。