ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝の静けさを突き破った。イシェは苦笑いを浮かべながら、テーブルの上を拭き始めた。「また大穴の話か。あの遺跡、何度探しても何もないって噂だよ」。ラーンは、イシェが言っていることは分かっていた。それでも、彼の目は輝いていた。「今回は違う！俺の勘が言うんだ。今回は必ず何か見つかる」。イシェはため息をついた。ラーンの「勘」は、今まで一度も当たったことがなかったからだ。
「で、今回は誰が依頼人？あの金持ちのおっさんか？」イシェが尋ねると、ラーンはニヤリと笑った。「違うぞ。今回はもっと面白い奴だ」。そう言って、ラーンはテルヘルを連れてくるように言った。
テルヘルは、黒く深い瞳を持つ美しい女性だった。彼女はいつも黒いマントを纏い、鋭い眼光で周囲を見渡していた。ラーンの幼馴染であるイシェとは対照的な存在だ。イシェはテルヘルの冷たい視線に少し緊張しながらも、彼女が持ち込んだ地図を広げた。「あの遺跡か…」。イシェの眉間にしわが集まった。「ここは危険な場所だと聞いたことがある。特に地下深くは…」
ラーンの言葉がイシェを遮った。「大丈夫だ、イシェ。俺たちが行くんだから」。ラーンはテルヘルに目を向け、「準備はいいか？」と尋ねた。テルヘルは小さく頷き、剣の柄に手をかけた。「では、始めよう」。
三人は、遺跡へと向かった。 ラーンの背中に続くイシェは、幼馴染の姿を見ながら、どこか不安を感じていた。いつも通りのラーンの笑顔の裏には、何かが変わってしまったような気がしたのだ。そして、テルヘルが抱く復讐の炎は、彼らをどこへ導くのか？イシェは深く息を吸い、不安を押し殺した。彼らには、まだ見ぬ未来が待っている。