ラーンの背中にイシェが軽く手を置いた。「待てよ、ラーン。あの崩れかかった壁、よく見てみる必要があるんじゃないのか？」
ラーンは一瞬迷った後、「ああ、そうだな。まあ、いいか。ちょっと待ってろよ」と、イシェの言葉に従い、慎重に足場を確かめながら壁際に進んだ。壁には苔むした石畳が重なり、隙間から朽ちた木が生えていた。
「どうだ？何か見つけたのか？」イシェが小声で尋ねると、ラーンは眉間に皺を寄せ、「な、何もないみたいだな」と肩を落とした。
その時、イシェは崩れ落ちた石の陰に何か光るものを見つけ、息をのんだ。「ラーン、見て！」
ラーンの視線はイシェが指さす場所に集中した。そこには、錆びついた小さな金属片が光っていた。それは、幼い頃に祖母から聞いた話に出てくる「古代人の遺物」に似ていた。祖母は、その遺物は「特別な力」を持つと語り、ラーンは幼い頃からそれを探す夢を抱いていた。
「これは…」ラーンの声は震えていた。「もしかして…？」
イシェは慎重に金属片を拾い上げ、埃を払った。その表面には複雑な模様が刻まれており、不思議な光を放っていた。「これは確かに、古代人の遺物だ」とイシェは確信した声で言った。
ラーンの心は高鳴り、興奮を抑えきれなかった。この小さな金属片が彼らにどんな未来をもたらすのか？
その時、背後から低い声が響いた。「面白いものを見つけたようだな」
ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが冷ややかな目で彼らをじっと見ていることに気づいた。彼女の手には剣が握られており、その鋭い眼光に、二人は背筋が凍りつくのを感じた。