ラーンの粗雑な剣さばきが埃を巻き上げ、イシェの眉間に皺が寄った。「また無駄な動きをしたわね。あの石は動かないわよ」。イシェは小さくため息をつきながら、懐から古い布製の地図を広げた。ビレーの遺跡探検で培ってきた経験から、この遺跡の構造を頭の中で描き出していた。
「いい加減にしろって!だってほら、何かあるかもしれないじゃん?」ラーンは陽気に笑って言ったが、イシェは彼の視線に隠れた不安を感じ取った。最近、ラーンの行動にどこか落ち着きのなさがあったのだ。以前なら遺跡探検で興奮する様子を見せたが、最近はどこかそっけない。
「イシェ、何かあったか?いつもより気が重そうだな」テルヘルは鋭い目で二つの視線を交わした。「何か隠していることがあるのでは?」
イシェは言葉を濁すことなく、ラーンの幼少期の出来事について語った。かつて、ラーンは遺跡探検中に落石事故で瀕死の重傷を負ったのだ。その時、彼を救ったのはイシェだった。あの時、イシェは幼いながらも冷静に処置をし、ラーンの命を救うことに成功した。
「あの日から、彼は遺跡を探検する度に危険を冒すようになったのよ。まるで何か証明したいかのように」
テルヘルは深く考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。「彼の行動は、過去のトラウマからくるものなのかもしれない。しかし、今、私たちに必要なのは冷静な判断力だ」。彼女はラーンの目をじっと見つめた。「ラーン、お前はなぜ遺跡を探検するのか?本当に、大穴を見つけたいのか?」
ラーンの表情が曇り、しばらく沈黙の後、彼はゆっくりと口を開いた。「実は…」
彼の言葉は、遺跡の奥深くへと響き渡っていった。