「おい、イシェ、今日はいい感じの予感がするぞ!」ラーンが目を輝かせ、遺跡の入り口に立っていた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せた。「またそんなこと言うなよ。あの洞窟、いつも何もないじゃないか。それに、テルヘルが今日の報酬を倍にするって言ってたのは、何かあるって意味だろ?」
ラーンの肩を軽く叩くイシェの手つきには力が入っていた。幼馴染だからこその遠慮のない言葉遣いは、ラーンには心地よい刺激だった。
「いや、今回は違うぞ!俺に何かが囁いてるんだ!」ラーンは剣を抜き、入り口へと踏み込んだ。「ほら、イシェも一緒だ」
テルヘルは洞窟の奥で待っていた。彼女の鋭い目は、まるで洞窟の暗闇を切り裂くように鋭かった。「遅れたな、二人は。準備はいいか?」
「もちろんです、テルヘル様」イシェは冷静に答えたが、ラーンはいつものように興奮気味だった。
「よし!俺たちに任せろ!」
洞窟の中は湿気で重く、不気味な影が揺れていた。ラーンの剣は、闇を切り裂くように光を放っていた。イシェは後ろから彼を見守りながら、足元に注意深く気を配った。彼らは幼い頃から一緒に冒険をしてきたが、イシェにとってラーンはいつも頼りになる存在だった。
「あっ!」
突然ラーンの声が響いた。彼は何かを掘り当てたようで、興奮気味に土を払いのけていた。「これは…!」彼の声は震えていた。
イシェも駆け寄ると、そこに置かれた小さな石版を見た。その表面には複雑な文字が刻まれており、かすかに光を放っていた。
「これは…」テルヘルが近づき、石版を慎重に触れた。「古代の言語だ…まさか、こんなところに…」
彼女の表情は興奮と警戒の色を帯びていた。石版の文字は、かつてヴォルダンに滅ぼされた文明のものだった。
「これは大発見だ…」
テルヘルの言葉が響き渡る中、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。幼馴染同士で共有してきた夢、そして、これから始まる新たな冒険への期待が、彼らの瞳を輝かせていた。