ビレーの喧騒を背に、ラーンは巨大な遺跡の入り口を見上げた。イシェがいつものように地図を広げ、複雑な jalur を確認している。テルヘルは影のように彼らに寄り添い、鋭い視線で周囲を警戒する。
「よし、今回は必ず大穴が見つかるぞ！」
ラーンの豪快な声は、イシェの眉間にしわを刻んだ。「また同じこと？ ラーン、前回の『大穴』はただの動物の巣穴だったじゃないか」
「あの時は運が悪かっただけだ！ この遺跡は違う。感じるんだ、何かが眠っているって！」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。彼の楽観性にはいつも呆れ返る。だが、彼を責めることもできない。ラーンこそが、この街で暮らす人々にとって希望の光であり、彼らの夢を象徴していたからだ。
彼らは遺跡内部へと足を踏み入れた。薄暗い通路に続く階段、崩れかけた石畳、壁には奇妙な模様が刻まれている。
「ここからは慎重に」
テルヘルの低い声が響いた。彼女は先頭を歩き、鋭い視線で周囲をくまなく探す。ラーンは彼女の後ろを歩き、イシェは最後に続く。
遺跡の奥深くまで進むにつれて、空気が重くなってきた。不気味な静寂が彼らの心を締め付ける。
「何かいる…」
イシェが小声で呟いた。彼の視線は、壁に映る影を追っている。ラーンは剣を握りしめ、警戒態勢に入った。テルヘルは静かに頷きながら、小さな瓶から赤い粉末を撒き始めた。
粉末が空中に舞うと、不気味な光を発しながら壁の影に反応した。影が動き出した。それは巨大な蜘蛛のような姿で、鋭い牙を剥き出しにして彼らに襲いかかってくる。
ラーンは剣を振り下ろす。イシェは素早い動きで蜘蛛の攻撃をかわす。テルヘルは呪文を唱えながら、炎を放つ。激しい戦いが始まった。
しかし、蜘蛛の力は想像を絶するほど強かった。ラーンの剣は蜘蛛の硬い甲羅に届かず、イシェの機敏な動きも蜘蛛の長い足に翻弄される。テルヘルの魔法も蜘蛛の抵抗を受け、効果を発揮しない。
「これは…」
イシェの声が震えていた。ラーンは絶体絶命の危機に陥っている。彼の顔には恐怖の色が浮かんでいた。
その時、テルヘルが何かを叫んだ。「ラーン！ この石碑に触れろ！」
ラーンの目の前には、壁に刻まれた石碑があった。彼は迷わず石碑に触れた。すると、石碑から光が放たれ、蜘蛛を包み込んだ。蜘蛛は悲鳴を上げながら消滅した。
戦いが終わると、3人は息も絶え絶えになっていた。ラーンの顔には、恐怖だけでなく、何か別の感情が浮かんでいた。それは、幻滅だった。
「これで終わりか…」
彼は呟きながら、石碑に手を置いた。そこには何もなく、ただ冷たい石の感触だけがあった。彼の大穴は、ただの幻想だったのだ。