ラーンが石ころを蹴飛ばすように、ビレーの市場へと向かう。イシェが後ろから「また遺跡に行くとでも言うのか?」と呆れた声で問いかける。「ああ、今日はテルヘルが珍しい遺物を手に入れるって聞いたんだ。金になるぞ!」とラーンは目を輝かせた。イシェはため息をついた。「あの女性には騙されるなと言っただろう。報酬はいいけど、危険な遺跡ばかりだ」と忠告する。しかしラーンの決意は固かった。
テルヘルはいつも通り、高慢な態度で彼らを待っていた。今回はヴォルダンに近い辺境の遺跡だと告げ、地図をテーブルに広げた。「ここには古代ヴォルダンの王家の墓があるという噂だ。貴重な遺物が見つかる可能性が高い」と説明する。イシェは地図をじっと見つめた。「王家の墓?そんな危険な場所に行くなんて…」と不安そうに言った。ラーンは興奮気味に「王家の墓か!もしかして宝が眠っているかもな!」と目を輝かせた。
テルヘルは冷たい目つきで彼らを睨みつけた。「今回は危険だ。だから報酬を増やす。」と告げた。イシェはため息をつきながら、ラーンの腕を引っ張った。「私たちは平民だ。そんな危険な場所に行く必要はないわよ」と訴えた。だがラーンはすでに決意していた。「宝が見つかったらお前も一緒に豊かになれるぞ!」と、イシェの言葉を振り払い、テルヘルに頷いた。
日が暮れかけた頃、彼らは遺跡へとたどり着いた。荒廃した石造りの門が、かつて栄華を誇っていた王国の威厳を静かに物語っている。イシェは不安そうに門の隙間を覗き込んだ。「ここに入るべきではないわ…」と呟く。ラーンは「大丈夫だ!テルヘルが一緒だし」と言いながら、先陣を切って遺跡へと入っていった。テルヘルはわずかに微笑みを浮かべ、イシェに「さあ、あなたも諦めるのはまだ早いでしょう」と囁いた。
夜空に満月が昇り、遺跡の影はさらに長く伸びていく。