ラーンが「大穴」を掘り当てると豪語したその日は、いつものように干潟の広がる遺跡へと足を運んでいた。イシェはいつものように彼の後ろを少し遅れて歩いていた。
「今回は本当に何かある気がするんだ!」とラーンが意気揚々と宣言するたびに、イシェはため息をつく。確かにここ数年の遺跡探索でラーンの直感が当たることは何度かあった。しかし、その度に掘り当てられたのは錆びついた剣や割れた壺といった価値のない遺物ばかりだったのだ。
今日は特にラーンの様子が落ち着きなく、いつも以上に興奮気味だ。「何か変わったことでもあったのか?」とイシェが尋ねると、ラーンは怪訝そうな顔をして「そんなわけないだろう」と答えた。だが、イシェは彼の視線に何かを感じ取った。ラーンの目は干潟の向こう側にある、いつもは立ち入らないような深い影に注がれていた。
その日、テルヘルはいつものように遺跡の入り口で彼らを待っていた。「今日はあの場所に行くんだ。お前たちが安全確保をしてくれれば、私は遺物を取り出す」とテルヘルは冷たく言った。
ラーンの直感が当たったのか、それともテルヘルの策略なのか。イシェは不安を感じながらも、ラーンと共に干潟の中を進んでいった。深く沈み込んだ足跡が、彼らの後を追うように広がっていく。
深い影の世界へと続く入り口。そこには、今まで見たことのないような巨大な石碑があった。石碑の表面には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように光っていた。ラーンの目は輝き、イシェは不安を募らせていた。