「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。二人は互いに頷き合う。ビレーの遺跡探索許可証を手に、彼らはいつもより緊張した面持ちで街の外へと足を踏み出した。
今日の目的地は、ビレーから北へ半日の距離にある「失われた王宮」と呼ばれる遺跡だった。テルヘルが古い文献から発見した情報によると、そこにはヴォルダンに奪われた彼女の大切な物が眠っている可能性があるという。
「あの遺跡は危険だぞ」ラーンの顔色を伺うようにイシェが言った。「以前、調査隊が中に潜ったら戻らなかったって話があったんだ」
「そんな噂は気にしない」テルヘルは冷たく言い放った。「必要なものは必ず手に入れる。そして、ヴォルダンに復讐を果たすのだ。」
遺跡の入り口は崩れ落ちた石造りの門で塞がれていた。ラーンが力ずくで門を押し開け、中へと踏み入れた。薄暗い通路から湿った土と古びた木の臭いが漂ってきた。
「何かいるぞ!」イシェが叫んだ瞬間、巨大な蜘蛛のような魔物が出現した。ラーンの剣が光り、激しい戦いが始まった。イシェは素早い動きで魔物の攻撃をかわし、テルヘルは魔法の矢を放つことで支援を加えた。
苦しい戦いの末、魔物を倒し、一行は奥へと進むことができた。しかし、道中、様々な罠や幻影に遭遇し、常に危機を乗り越えなければならなかった。
ついに、遺跡の中心部にある大広間に到着した。そこには、黄金の王冠が鎮座していた。テルヘルが息を呑むように王冠を見つめた。それは彼女の復讐の鍵となるはずだった。
だが、その時、背後から何者かの声が聞こえた。「なかなかやるじゃないか」
振り返ると、そこには黒マントを身にまとい、鋭い目をした男が立っていた。ヴォルダンの兵士だ。
「お前は…」テルヘルは言葉を失った。男は嘲笑うように言った。「この遺跡はヴォルダンに属する。お前たちが持ち帰るものなど何もない」
男の手から黒い煙が立ち上り、広間は暗闇に包まれた。ラーンとイシェが抵抗を試みたが、その力は圧倒的に弱かった。テルヘルは絶望を感じ始めた。だが、その時、彼女の目の前で奇妙な現象が起こった。
広間の壁から光が放たれ、男の動きを一瞬止めた。その隙にラーンの剣が男の胸に突き刺さった。男は悲鳴を上げ、崩れ落ちた。
光は消え、広間には再び静寂が訪れた。ラーンとイシェは困惑した顔でテルヘルを見た。テルヘル自身も何が起こったのか理解できていなかった。しかし、彼女は確信した。これは単なる偶然ではない。何か別の力が、彼女たちの行動を「干渉」していたのだ。