ラーンの大笑い声が響き渡るビレーの酒場。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また遺跡で失敗したのか？」とラーンに問いかけると、彼はテーブルに手を打ちつけて言った。「違うんだ！今回は違う！あの奥深くの部屋で見つけたんだぞ、巨大な石碑が！」
「石碑？」イシェは少し興味を持った。「何て書いてあったのか？」
「まだ解読できてないんだ。複雑な模様が刻まれていて…」ラーンは興奮気味に言った。「でも、テルヘルが言ってた古代文明の文字に似てるらしいんだって！もしかしたら、あの伝説の『大穴』の場所を示しているかもしれない！」
イシェはため息をついた。「また夢を見始めたか…。あの石碑はただの飾り物かもしれないし、仮に大穴の場所を示していたとしても、ヴォルダンが先に手を出す可能性もある。我々にはリスクが高すぎる」。
ラーンの笑顔は少し曇った。「でも、イシェ。あの石碑を見た時、何かを感じたんだ。まるで…俺たちを呼んでいるような気がして…」
その時、酒場のドアが開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い視線はすぐにラーンとイシェに向けられた。「準備はいいか？次の遺跡へ行くぞ」。
イシェはテルヘルの言葉に少し驚きを感じた。いつも通り冷静で無表情の彼女が、今日はどこか急いでいるように見えた。「次の遺跡？まだ解読できてない石碑のことなのに…」
「石碑は後回しだ」テルヘルは冷たく言った。「情報が入った。ヴォルダンが動き出した。あの石碑と同じ古代文明の遺跡を調査しているらしい。我々も同時に手をつけなければ、遅れをとる」。
イシェはラーンの目をみた。彼はまだ夢を見ているようだが、テルヘルの言葉に少しだけ現実が戻ってきたようだ。イシェは小さく頷いた。「わかった。準備をする」。
ラーンとイシェは、テルヘルと共にビレーを後にした。彼らは遺跡へ向かう道中で、かつての故郷を思い出す。それぞれの過去、そして未来への希望を胸に抱きながら…。
何よりも大切なもの、失われた故郷への「帰還」を。