「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線で二人を見据えた。ラーンはいつものように Carefree な笑顔で頷き、イシェは小さく頷くだけだった。今日も遺跡探査だ。ビレーから少し離れた場所にある、地元では「忘れられた神殿」と呼ばれる遺跡へ向かう。
テルヘルは地図を広げ、複雑な地形を指さした。「今回は奥深くまで行く。危険だが、そこには大きな報酬が待っているはずだ。」ラーンの目が輝き、イシェは眉間に皺を寄せた。「テルヘルさん、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるんです。罠が多いらしいし…」
「大丈夫だ、イシェ。俺が守る」ラーンは豪気に笑った。イシェはため息をつきながら、剣とランタンを手に取った。テルヘルは冷たい視線で二人を見つめ、そして小さく頷いた。「では、行こう。」
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。足元には崩れかけの石畳が広がり、壁には不可解な文字が刻まれていた。「ここは一体…」ラーンが呟くと、イシェは警告するように手を上げた。「静かにしろ、何かいるかもしれない。」
その時、奥の方から不気味な音が響き渡った。それは金属的な音で、まるで巨大な歯車が回転するような音だった。ラーンの表情が硬くなり、イシェは剣を構えた。「何だあの音…？」テルヘルは冷静に状況を判断し、「罠だ。気をつけろ。」と呟いた。
彼らはゆっくりと奥へと進んでいく。音は次第に大きくなり、壁の震えすら感じるようになった。ついに、巨大な扉の前にたどり着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、中心には巨大な鍵穴があった。
「これは…」イシェの目が丸くなった。「この遺跡の心臓部…？」ラーンは興奮気味に扉に触れようとしたが、テルヘルが制止した。「待て、ラーン。ここは慎重に進まないと。」彼女は扉の模様をじっと見つめ、「この鍵穴には特殊な鍵が必要だ。そして…」
その時、扉の上から巨大な影が降りかかってきた。それは巨大な石像で、鋭い爪と牙を剥き出しにしていた。「気をつけろ！」テルヘルは剣を抜いて石像に立ち向かう。ラーンも慌てて剣を抜き、イシェは素早く後ろに回り込んだ。
激しい戦いが始まった。石像の攻撃は力強く、テルヘルは巧みな剣術で切り抜けるものの、次第に追い詰められていく。ラーンは石像に挑もうとするが、その巨体には届かず、イシェは石像の足元を攻撃するも効果は薄い。
その時、ラーンの動きが変わった。彼は石像の攻撃をかわしながら、テルヘルの背後に回り込み、彼女の攻撃に合わせて一撃を放った。それはまるで師匠が弟子に技を授けるかのような連携プレーだった。石像はバランスを崩し、ついに倒れ込んだ。
息を切らしながら立ち上がった三人は、互いに顔を見合わせた。「…や、やった…」イシェは震える声で言った。ラーンは苦笑いしながら、「あの時、テルヘルさんが教えてくれた動き…まさか、あの時…」と呟いた。テルヘルは少しだけ微笑んだ。「そうだな、ラーン。お前にはまだ伸びしろがある。」
扉の謎はまだ解けぬまま、三人は遺跡から立ち去った。彼らの前に広がる道はまだまだ長く、多くの試練が待ち受けているだろう。しかし、彼らは互いに信頼し合い、共に歩んでいく決意を固めていた。