「よし、今日はあの洞窟だな!」
ラーンの元気な声に、イシェはため息をついた。「また、あそこの危険な遺跡? ラーン、あの洞窟にはまだ誰も入ったことがないって聞いたわ。何か恐ろしいものがいるかもしれないのよ」
「大丈夫だって! きっと大穴があるはずだ。師匠の言葉を思い出せよ、イシェ。勇気と好奇心があれば、どんな困難も乗り越えられるって!」
ラーンの瞳は輝いていて、その熱意にイシェは心を動かされる。だが、冷静な頭脳を持つ彼女は、ラーンの言葉の裏にある「師匠」の存在を常に意識していた。
ラーンの師匠とは、かつてビレーで名を馳せた遺跡探検家だったという。彼は、若きラーンに冒険の楽しさと危険性を教えた。そして、ある日、突然姿を消したのだ。その理由は誰にも分からず、ラーンは師匠の教えを胸に秘め、今日も遺跡を探検し続けている。
「よし、行くぞイシェ! テルヘルも待っているだろう!」
ラーンの言葉に、イシェは深く頷いた。そして、三人はビレーを出発し、危険な遺跡へと向かっていった。
洞窟の入り口は暗く、冷たい風が吹きつけてきた。ラーンは剣を構え、イシェは慎重に足取りを確かめながら進む。テルヘルは後ろから二人を見つめていた。
「この洞窟には何かいる気配を感じます」
テルヘルの低い声に、ラーンとイシェが顔を合わせた。
「何がいるのかしら…」
イシェの声は震えていた。ラーンは、イシェの不安を察し、彼女の手を握りしめた。
「大丈夫だ。俺が守る」
ラーンの言葉に励まされたイシェは、再び前に進み出した。だが、洞窟の奥深くから、不気味な音が聞こえてきた。それは、まるで何かの獣が唸るような音だった。
「これは…!」
ラーンの顔色が変わった。彼は、師匠がかつて語った話を思い出した。ある遺跡で遭遇した恐ろしい獣について…。