ビレーの市場は活気に満ちていた。朝から晩まで人通りが絶えず、様々な物音が入り混じり、独特の喧騒を作り出している。ラーンとイシェはそんな市場の中を歩きながら、テルヘルからもらったリストを確かめていた。
「本当にこんなものが必要なのか? 」
イシェは眉間にしわを寄せながら、リストに書かれた奇妙な植物の名前を呟いた。
「テルヘルには用があるんだろう」
ラーンは肩をすくめた。「それに、報酬もいいんだろ?」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な態度にはいつも呆れていたが、彼と一緒に遺跡を探索するのは楽しいし、彼の存在はイシェ自身の心の支えになっていたのも事実だった。
「よし、まずはこの薬草を探してみるか」
ラーンが市場の果物屋さんの近くで立ち止まり、目を輝かせた。そこには、リストに書かれた植物によく似たものが並んでいた。
「あ、あの花だ!」
イシェも気づき、ラーンの後をついていった。しかし、その瞬間、後ろから声が聞こえた。
「おい、待て!」
振り返ると、背の高い男が怒った顔で彼らに近づいてきた。男の腕には傷跡がいくつも見られ、剣を腰に携えているのがわかった。
「お前たち、あの植物を知っているか?」
男は鋭い眼光でラーンとイシェを見据えた。
「ええ、知っています」
ラーンの答えに、男はさらに scowl を深めた。
「あの植物は俺のものだ。どこで手に入れたのか教えてくれ」
ラーンの表情が曇った。テルヘルからもらったリストには、「市場で購入できる」と書いてあったはずだ。なぜこの男が言い張るのだ?
イシェはラーンに耳打ちした。「何か変だと思う。私たちが関わらない方がいいんじゃないか?」
ラーンの顔はますます険しくなった。
「でも、テルヘルに頼まれたんだ」
彼は男に向かって一歩踏み出した。