ビレーの酒場「荒れ果てた竜」はいつもより賑やかだった。ラーンがイシェとテーブルに腰を下ろすと、テルヘルがすでにグラスを傾けて待っていた。
「今日は大口の依頼が入ったようだ。ヴォルダン領に近接する遺跡だ。危険度は高いが報酬も相当なものだ」
テルヘルはそう言うと、テーブルの上に地図を広げた。ラーンの目は輝き、イシェは眉間に皺を寄せた。
「ヴォルダン領か…あの辺りは危険すぎるだろう」
イシェの言葉に、ラーンが軽快に笑った。
「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるじゃないか。それにあの遺跡には、もしかしたら大穴があるかもしれないぞ!」
ラーンの言葉に、テルヘルは薄暗い微笑を浮かべた。
「大穴…確かに魅力的だが、今回は私にとって別の目的がある。あの遺跡にはヴォルダンが隠しているある物に関する手がかりがある可能性が高いのだ」
イシェはテルヘルの言葉に、わずかに不安を感じた。以前から、テルヘルがヴォルダンへの復讐心を抱いていることは知っていた。しかし、その復讐のために危険な遺跡へ足を踏み入れるとは…
「報酬はどうなの?」
イシェの問いかけに、テルヘルはニヤリと笑った。
「心配する必要はない。今回は差益を多く得られるように交渉してきた」
ラーンの顔はさらに輝きを増した。イシェはため息をついたが、結局、二人の決意を変えられなかった。
翌日、三人はビレーを出発した。ヴォルダン領への道は険しく、危険な獣や盗賊が潜んでいた。それでも彼らは、それぞれの思いを胸に、遺跡へと向かっていった。
遺跡の入り口には、ヴォルダンの紋章が刻まれていた。イシェは不安を隠せなかったが、ラーンは剣を構え、テルヘルは冷静な表情で周囲を見渡していた。
「さあ、大穴を探す旅が始まるぞ!」
ラーンの声が、荒れ果てた遺跡に響き渡った。