ラーンの粗雑な剣技が、埃っぽい遺跡の奥深くにある石室の扉を粉砕した。イシェは眉間に皺を寄せながら、「また壊したのか？本当に慎重にやれって言っただろうに」と溜息をついた。ラーンはニヤリと笑って「ほら、開いちゃったじゃん？大穴への入り口だ！」と豪快に言った。イシェは彼のその無邪気さに呆れながらも、心のどこかで彼の楽観的なエネルギーに引っ張られるのを感じていた。
テルヘルは二人のやり取りを冷ややかな目で見ていた。彼女には、この遺跡がヴォルダンとの戦いに繋がる鍵だと確信していた。彼女は二人に指示を出す。「奥へ進む前に、この石板を解読してみなさい」と冷静に言った。イシェは慎重に石板の文字をトレースし始めた。ラーンは「また難しいやつか？」と愚痴をこぼしながら、テルヘルに話しかけた。「あの大穴の話はどうなったんだ？いつ探しに行くんだ？」
テルヘルは一瞬目を閉じ、深い呼吸をした。「今はこの遺跡が最優先だ。大穴は後回しだ」と答えた。彼女の言葉には、何か隠された意味があったように思えたが、ラーンは気づかなかった。イシェは石板の解読を終え、「これは古代の呪文みたいだ。封印を解くためのものかもしれない…」と呟いた。
その時、遺跡の奥から不気味な音が響き渡った。ラーンは剣を抜き、イシェは緊張した面持ちで後ろに下がった。テルヘルは鋭い視線で周囲を見回し、「何かが近づいている」と警告した。三人は互いに背を預け合い、未知なる脅威に立ち向かう準備をした。彼らの前に立ちはだかるものは、遺跡の秘密を守る者なのか、それともヴォルダンとの戦いに巻き込まれる運命なのか？
ラーンの無邪気さ、イシェの慎重さ、テルヘルの冷酷さ。三人の異なる価値観が、この遺跡という閉鎖空間の中で交錯し、新たな物語を生み出していく。