「おいラーン、あの石碑、どう思う?」イシェが指さすのは、朽ちかけた壁に刻まれた奇妙な文字列だった。ラーンは眉間にしわを寄せながら、剣先で軽く石碑を突いてみた。「よく分からん。でも、なんか禍々しい気配がするぜ。」
「あの記号…どこかで見たような気がする」イシェは薄暗い遺跡の奥へ進もうとするラーンの腕を掴んだ。「待てよ、ここは危険そうじゃないか?それに、テルヘルはどこだ?」
その時、背後から冷酷な声が響いた。「探す必要はないわ。ここにいる」
振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の表情は硬く、手に持った巻物には不吉な赤い光が宿っている。「あの石碑を解読したわ。この遺跡はヴォルダンが隠した財宝の在処を示している」
ラーンの目は輝き始めた。「よし!ついに大穴が見つかるのか!」
イシェは不安げに言った。「でも、ヴォルダンの財宝…?何か裏があるんじゃないか?」
「そうだろうね。だから、我々はこの遺跡を手に入れる必要がある」テルヘルは巻物を見せながら続けた。「この遺跡の所有権を示す証が書かれている。これを元に、エンノル連合に正式に申請し…」
その時、入り口付近から重たい音がした。鉄扉が轟音と共に閉ざされ、同時に複数の影が姿を現した。武装兵士たちだ。
「何だこれは!?」ラーンは剣を抜いた。「ヴォルダンか?!」
テルヘルは冷静に言った。「いいえ、エンノル連合の軍隊です。この遺跡は既に差し押さえの対象になっており…」
ラーンの顔色が変わった。「差し押さえ…?どういうことだ?」
イシェが慌ててテルヘルの巻物を取り上げた。「これは…偽造品!騙されていた!」
テルヘルは苦い笑みを浮かべた。「残念ね、あなたたちには利用価値がなくなったようです」