ビレーの街はずれにある酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェはいつものように眉間にしわを寄せ、彼の肩を軽く叩いた。「また大口叩いてるわね。あの遺跡で財宝が見つかるなんて、本当に信じてるの?」
「もちろん!いつか必ず大穴を見つけるさ!」ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をつきながら、テーブルに置かれた粗末な地図を広げた。「今日はテルヘルさんの指示通り、東にあるあの遺跡へ行くんだっけ?」
「そうだ。テルヘルさんが言うには、そこの奥深くには古代の王の墓があるらしいぞ。黄金や宝石で埋め尽くされてるって!」ラーンの顔は興奮の色を帯びていたが、イシェは冷静に地図を眺めた。「王の墓…だと?そんな危険な場所へ行くのは避けたいんだけど…」
その時、店の扉が開き、嵐の吹き荒れる外からテルヘルが入ってきた。彼女の鋭い目つきは、いつも以上に冷たかった。「準備は良いか?」と彼女は問いかけた。ラーンの表情は一変し、真剣な顔で頷いた。「いつでも行けるぜ!」イシェは小さく頷くしかできなかった。
嵐の音が激しくなり、街全体が揺れるような気がした。テルヘルは地図を広げ、「遺跡への道は険しい。注意深く進まなければ」と指示を出し始めた。イシェは不安を感じながら、ラーンと共にテルヘルの後を歩み始めた。
遺跡への道は険しく、嵐の吹き荒れる中を進むことは容易ではなかった。時折、落石が転がり落ちてきて、彼らを脅かした。イシェは常に周囲を警戒しながら、ラーンの背中にぴったりとついていった。
ついに遺跡の入り口にたどり着いた時、嵐はさらに激しさを増していた。入り口には巨大な石門がそびえ立っていたが、その表面には何やら不気味な文字が刻まれていた。「これは…?」イシェが不安そうに呟くと、テルヘルは冷静に言った。「古代の呪文だ。触れないように注意しろ」
ラーンは何も考えずに石門に触れようとしたが、イシェが慌てて彼を止めた。「待ちなさい!テルヘルさんが言ってるでしょ!」ラーンの顔色が変わった。「何だ、この Cursed Gate だってんだ…」彼はイシェの制止を振り払おうとした。しかし、その時、空から稲妻が走り、石門に直撃した。
激しい光と轟音が響き渡り、イシェは目をぎゅっと閉じた。嵐の音は一瞬で消え去ったかのように静寂に包まれた。イシェが目をゆっくり開けると、ラーンが石門の前に倒れ込んでいた。彼の顔色は青ざめ、意識を失っていた。
「ラーン!」イシェは駆け寄って彼を支えた。「大丈夫?!」
テルヘルは冷静な表情で言った。「 Cursed Gate は触れた者を呪い殺すと言われている。彼は…もう助からないかもしれない」
イシェは絶望した気持ちでラーンの顔を覗き込んだ。彼の呼吸は微弱で、まるで風のように感じられた。嵐は過ぎ去り、静寂の世界に彼らを残した。