ラーンの重い斧が岩盤を砕き、埃の粉塵が立ち上る。薄暗い遺跡内部は、彼らの呼吸音だけが響いていた。「おい、イシェ、ここだな！」ラーンが興奮気味に叫ぶと、イシェは懐中電灯を照らしながら慎重に周囲を確認した。「確かに、壁に何か刻まれているみたいだ…」。
テルヘルは背後から近づき、その刻印を指さした。「古代語だ。ここはかつてヴォルダンの支配下にあったようだ。そして…」彼女は声のトーンを落とす。「この遺跡には、ヴォルダンが恐れる何かが眠っている可能性が高い」。ラーンは目を輝かせ、「やっぱり大穴か！よし、イシェ、準備はいいか！」
イシェはため息をつきながら頷く。いつも通りのラーンの無計画さに呆れながらも、彼の熱意に巻き込まれてしまうのだ。「わかったよ、準備はいい…だけど、本当に危険な場所かもしれないってことを忘れずに」。
彼らは刻印に従って遺跡の奥深くへと進んだ。通路は狭く、天井からは鍾乳石が鋭利に突き出ている。一歩踏み外せば転落死するほどの崖っぷちだ。イシェは慎重に足場を選びながら進むが、ラーンは相変わらず軽快に進んでいく。
「おい、待てよ！ラーン！」イシェが叫んだ時、既にラーンは深い淵の前に立っていた。目の前には崩れかけた橋がかかっている。反対側からは薄暗い光が漏れている。「あそこが…出口か？」ラーンの声が震えていた。
テルヘルは冷静に状況を判断した。「あの橋を渡れば、目的地だ。だが、崩落寸前の状態だ。慎重に進まなければ…」彼女は視線をイシェに向けた。「イシェ、お前は残 here. ラーンと私は向こう側へ行く。安全を確認してから合流する」。イシェが抗議しようとしたが、テルヘルの厳しい視線に言葉を飲み込んだ。
ラーンとテルヘルは崩れそうな橋を慎重に渡り始めた。一歩一歩が命懸けだ。彼らの背後から、イシェの不安げな声が聞こえてきた。「気を付けて…」。
崖っぷちに立つイシェは、彼らの行く末を見つめるしかなく、胸が締め付けられる思いだった。