ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げている。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の話を聞いている。
「あの遺跡の奥深くには、黄金でできた巨大な像があるって聞いたんだ! それこそが俺の夢の大穴だ!」
イシェはため息をついた。「またそんな話? ラーン、あの遺跡は危険だって何度も言ったじゃないか。」
ラーンの笑顔は消えない。「危険だからこそ面白いだろ!それに、テルヘルさんが一緒なら大丈夫さ。彼女は強いし、賢いし...」
イシェはラーンの言葉を遮った。「テルヘルさんの目的は私たちと同じじゃない。彼女には別の理由があるはずだ。」
「そうかな? 俺はテルヘルさんも同じように、崇高な夢を持っていると思ってるんだ。」
イシェはラーンの瞳に、どこか曇りを感じた。
その夜、ビレーの街を離れ、遺跡へと続く山道を行く三人の影。テルヘルは静かに歩みを進めるが、彼女の表情は硬い。
「あの遺跡には、ヴォルダンが隠した秘密がある。」彼女は呟いた。「それを手に入れるためなら、どんな犠牲も厭わない。」
ラーンの背中は、夕日に照らされて大きく見えた。「俺たちだって、夢のために命を懸ける覚悟はある!」
イシェは二つの影に挟まれながら、深くため息をつく。彼らの夢、そしてテルヘルの復讐。果たしてこの遺跡で何が待ち受けているのか。イシェは不安な気持ちを抱きながらも、小さく拳を握りしめた。