ラーンが石ころを蹴飛ばしてイシェの足を引っ掛けて、小走りになった。イシェは「またか！」と怒りながらラーンを睨みつけたが、その目は笑みを浮かべていた。
「ほら、今日は大穴が見つかる予感がするんだってば！」とラーンは言い、背中に大きな剣を担いで山道へと足を進めた。イシェはため息をつきながら後を追った。
ビレーから少し離れた場所にある遺跡の入り口には、テルヘルが待っていた。「遅刻だぞ。準備はいいか？」
テルヘルの鋭い視線がラーンとイシェを刺すように感じた。二人は互いに顔を見合わせた。山肌に広がる遺跡の入り口は、まるで巨大な獣の口のようだった。
「よし、入ろう」
テルヘルが先頭を切って遺跡内部へと消えていった。ラーンの足取りは軽やかだったが、イシェはどこか不安を感じていた。いつもと違う何かを感じたのだ。山道から遺跡へ続く道のりも、いつもより長く感じた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。ラーンは興奮気味に周囲をくまなく見回し、イシェは警戒しながら足元を照らしていた。テルヘルは静かに進み、時折壁に触れて何かを確認しているようだった。
深い洞窟のような通路を進んでいくと、突然広がる空間に出た。そこには巨大な石柱が何本も立ち並び、天井から光が差し込んでいた。その光景にラーンは声を上げた。「すごい！こんな遺跡があるなんて！」
イシェはラーンの興奮を抑えられず、「少し落ち着いて」と注意した。だが、彼女の目はすでに何かを見つけていた。石柱の影に、何かが蠢いているように感じたのだ。
その時、地面が揺れた。小さな石が崩れ落ちた音が聞こえた。イシェは一瞬にして状況を理解した。「逃げろ！これは罠だ！」
ラーンの顔色が変わった。しかし、遅かった。壁から巨大な影が伸びてきて、彼らを飲み込んだ。山肌に広がる遺跡は、まるで巨大な獣の胃袋のように、三人の運命を呑み込んでいった。