ラーンの大男の体躯が洞窟の狭い入り口を塞ぐように立ち尽くしている。イシェが後ろから彼を軽く押すと、ラーンは「おいおい、急げよ！」と不機嫌そうに言った。
「落ち着いて、ラーン。あの奥には罠があるかもしれない」イシェは冷静に言った。「テルヘルが言っていた通り、ここは以前にも探索されたことがあるらしい。慎重に進まないと」
「はあ、わかったわかった」ラーンはそう言うと、渋々剣を構え、ゆっくりと洞窟の中へ入った。イシェは彼の後ろを歩きながら、周囲の壁に目を凝らした。不自然な石組みや、かすかに残る魔法の紋章。確かに、この遺跡には何かが隠されている。
テルヘルは先に進んで、洞窟の奥深くで立ち止まっていた。「ここだ」と彼女は言った。彼女の指先が、壁に描かれた複雑な模様をなぞった。「この壁画は、古代の言語で書かれている。ここに眠っているのは、強力な魔物の魂だというのだ」
ラーンの顔色が変わった。「魔物か…まさか…」
「だが、その魂を支配できる者は、真の力を手に入れることができる」テルヘルは目を輝かせた。「それが我々の目的だ」
イシェは不安に駆られた。テルヘルの目的は、単なる遺跡探索ではないようだ。何か大きな計画がある。そして、それは自分たちにとっても危険な計画なのかもしれない。
その時、壁画に描かれた紋章が光り始めた。壁の奥から、不気味な音が聞こえてきた。ラーンは剣を構え、イシェも準備万端だ。
「始まった」テルヘルは冷たく言った。彼女の瞳には、狂気のような光が宿っていた。