「おい、イシェ、今日はいい感じの遺跡らしいぞ!」ラーンが目を輝かせて、古い地図を広げた。イシェはため息をつきながら、テーブルの上の食べかけのパンを片付け始めた。「また大穴だなんて夢を見るんじゃないわよ。あの地図、もう何年も見てるでしょ?」
「でも、今回は違う気がするんだ!」ラーンの顔は自信に満ちていた。「ほら、テルヘルが言ったじゃないか?この遺跡には何か特別な遺物が眠っているって。」イシェはラーンをじっと見つめた。「本当にそう信じてるの?」と尋ねた。ラーンは少しだけ顔を赤らめながら、「うん、信じてるよ。あのテルヘルは嘘をつかないし」と答えた。
「それに、最近ずっとテルヘルがビレーに居候してるじゃないか。何か企んでるんじゃないかと疑ってたんだけど…」イシェは少し不安げに言った。「もしかして、この遺跡を手に入れるために僕たちを利用しようとしてるんじゃないのかしら?」
ラーンはイシェの言葉に少し動揺した。確かにテルヘルはいつも冷静で計算高い女性だ。ビレーに来てからずっと、彼らの住むアパートの一室を借りているのだ。まるで、何かを計画しているかのような印象を受けることもあった。「いや、そんなわけないよ!」ラーンは自分を奮い立たせるように言った。「僕たちだって、テルヘルに何かを提供してるんだ!遺跡探索の知識とか、経験とか…」
イシェはラーンの言葉に少しだけ安心した表情を見せた。しかし、彼女の心にはまだ不安が残っていた。テルヘルは本当に彼らを信頼しているのだろうか?それとも、彼らの力を利用して、自分だけの目的を達成しようとしているのだろうか?
「よし!今日は準備をして、明日に遺跡へ行くぞ!」ラーンは再び元気を取り戻し、イシェに言った。イシェは深くため息をつきながら、ラーンの後を追いかけた。彼女には、テルヘルが隠している何かがあるような気がしていた。そして、その秘密が明らかになるまで、彼らの人生は大きく変わってしまうのではないかという予感がしたのだ。