「おい、イシェ!あの石像、動いたぞ!」ラーンの粗い声がビレーの洞窟内にこだました。イシェは細長い体を引き締め、石像に光を当てるランタンを慎重に動かした。確かに、影がわずかに変化している。「あれ?」イシェの眉間に皺が刻まれた。
「まさか、あの噂の…」ラーンは興奮気味に言葉を続けようとしたが、イシェは彼を制止するように手を上げた。「落ち着いて、ラーン。確認が必要だ」イシェは石像の表面をよく観察し、わずかに変化した模様に目を細めた。
「これは…古代ヴォルダン語だ。まさか…」イシェの目は驚きで大きく開いた。「これは、伝説の『少年王』の墓ではないか?」
ラーンの顔には興奮の色が戻ってきた。「そうか!あの伝説は本当だったのか!」彼は剣を構え、石像に向かって叫んだ。「おい、少年王!俺たちに力を示せ!」
石像は突然、目の部分から赤い光を放った。ラーンとイシェは目を背けるように顔を伏せた。その時、洞窟の奥から低い声が響き渡った。「何をするつもりだ?」
彼らは振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の顔色は険しく、剣を抜き出した。ラーンの目の前で石像が崩れ始め、中から現れたのは小さな金の箱だった。
「これは…」イシェは箱を手に取り、慎重に開けた。中には、輝く宝石と一枚の羊皮紙が入っていた。テルヘルは箱を奪い取った。「これで、ヴォルダンへの復讐に一歩近づいた」彼女は言った。ラーンはテルヘルの言葉に戸惑いを感じながらも、少年王の墓から発掘された宝物を前に興奮を抑えきれなかった。
イシェはテルヘルの表情を見て、彼女の心の中に渦巻く復讐の炎を垣間見た。そして、自分たちが巻き込まれてしまったことに対する不安を感じた。