「よし、行こう！」ラーンの声がビレーの朝日に溶け込んだ。イシェはいつものようにため息をつきながら、彼について行く。ラーンが興奮気味に遺跡の地図を広げる。今回はテルヘルからの依頼で、かつてヴォルダン帝国の要塞跡らしい場所だ。
「今回は大きいぞ、イシェ！あのテルヘルも珍しい遺物があると騒いでたんだ」ラーンの目は輝いていた。イシェは地図をじっと見つめた。地図には奇妙な記号がいくつか書き込まれている。以前、テルヘルからもらった古い書物に似た記号だった。「もしかして…」
「なあ、ラーン、あの記号って...」イシェが口を開こうとしたその時、ラーンが走り出した。「ほら、行こう！宝が待ってるぞ！」
遺跡の入り口は崩れかけており、隙間から薄暗い空気が流れ出ていた。イシェは懐中電灯を点けて慎重に進む。ラーンの後ろ姿は、まるで子供のように無邪気に遺跡の中へと吸い込まれていくようだった。
遺跡内部は広くて複雑な構造をしていた。壁には古代文字が刻まれており、イシェは興味津々で記録を取り始めた。ラーンは meanwhile 、剣を手に、何かに反応するような仕草を見せていた。「何かいるのか？」イシェは不安を感じながらも、ラーンの後ろをついていった。
やがて彼らは大きな部屋にたどり着いた。中央には祭壇が置かれており、その上には奇妙な金属製の球体が鎮座していた。球体は複雑な模様で装飾されており、まるで生きているかのように脈打っているようだった。「これは...！」イシェは息を呑んだ。
ラーンは球体に手を伸ばそうとしたその時、イシェが彼を掴んで引き戻した。「待て！何か変だぞ」イシェの直感が危機を察知していた。その瞬間、球体から強い光が放たれ、部屋全体を満たした。
「うわぁ！」ラーンが目を shielding している間に、イシェは小さな金属製の箱に目をつけた。それは祭壇の足元に置かれており、光に照らされて輝いていた。イシェは素早く箱を拾い上げ、自分の懐に隠した。
光が消えると、部屋は元の静けさに包まれた。ラーンは呆然と球体を見つめていた。「なんだあれは...？」
「後でゆっくり考えるよ」イシェはラーンの肩を叩き、遺跡を出るよう促した。