ラーンの豪快な笑い声がビレーの朝の静けさに溶け込んでいく。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の背後から「本当にあの小道を通る必要があるのか?」と呟いた。
「大丈夫だ!あの小道は遺跡への近道だって言ってたぞ。ほら、テルヘルも言ってたよな?」ラーンは振り返り、自信満々に言ったが、イシェの視線を感じて少しだけ自信をなくした。テルヘルは冷静に地図を広げ、「確かにその小道を通れば距離は短いが、崩落箇所が多いという報告もある。安全を考慮すると別のルートを通った方が…」
「そんなこと言っても時間かかるし、遅れると日没前に遺跡に着けないぞ!」ラーンはイシェの言葉を遮り、歩き出す。「ほら、行くぞイシェ!」
イシェはため息をつきながらラーンの後を追った。小道は確かに崩落箇所が多く、険しい道だった。時折、足元から石が崩れ落ち、イシェは背筋を凍らせた。テルヘルは冷静に状況を把握しながら、常に周囲の動きに注意を払っていた。
「ここからは特に注意が必要だ。」テルヘルは言った。「この小道はかつてヴォルダン軍が侵攻した際に利用されたという記録がある。遺跡を守るために罠が仕掛けられている可能性もある。」
ラーンの顔色が少し引きつった。イシェも緊張感が高まった。彼らは慎重に進むしかなくなった。小道の両側に生い茂る木々は、まるで彼らを監視するかのように揺れていた。
日が沈み始め、辺りは薄暗くなった。ようやく遺跡への入り口が見えた時、イシェは安堵した息をついた。しかし、ラーンの顔には少しだけ失望の色が浮かんでいた。「遺跡の入り口…あれ?なんか違うぞ…」
イシェも気づいた。目の前に広がるのは、かつての遺跡の姿ではなく、荒れ果てた廃墟だった。小道は them を裏切り、偽りの目的地へと導いていたのだ。