ラーンの粗雑な斧の振り下ろしが埃を巻き上げ、薄暗い遺跡の奥深くへと消えていった。イシェは眉間にシワを寄せながら、足元を照らすランプの光を調整した。「あの大雑把なやり方では、何か見落としているかもしれないぞ」。
「大丈夫だ、大丈夫。そんな細かいもん気にする必要ねえだろ」ラーンは豪快に笑って言ったが、イシェの視線を感じると少しだけ肩をすくめた。「それに、この遺跡、俺には何か感じるんだ。でっかい宝が眠っているって」。
イシェはため息をついた。「いつもそう言ってるじゃないか。今回は本当に何か見つかるといいけど…」
その時、テルヘルが鋭い声で言った。「静かにしろ！」二人は驚いて振り返ると、テルヘルが壁の模様に指をさしていた。「これは…ヴォルダンの紋章だ」。
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンって…まさか、ここに？」
「まさか、ヴォルダンが遺跡に何か隠してるわけないだろう」イシェは言ったが、彼の声には自信がなかった。テルヘルは冷酷な表情で言った。「ヴォルダンはあらゆる手段を使って力を蓄えている。遺跡の力を利用する可能性も否定できない」。
彼女は鋭い視線で三人を睨みつけた。「もし、ここで何かヴォルダンに関するものが見つかったら…」彼女は言葉を濁した。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らの目の奥には、これまで感じたことのない不安の色が浮かんでいた。