ビレーの朝露が乾き始める頃、ラーンはいつも通りイシェを寝ぼけ眼で起こした。イシェは小さくため息をつきながら起き上がり、粗末な食卓に並んだパンとチーズを口にした。ラーンの顔にはいつもの自信満々の笑みが浮かんでいた。「今日は絶対何か掘り出すぞ!大穴だ!」
イシェはいつものように眉間にしわを寄せた。「ラーン、そんなこと言ってるのはもう何回目?あの遺跡は既に何度も調査したろ?」
「だがな、今回は違うんだ!あの石碑の刻印、よく見ると古代語で『秘宝の場所』って書いてあるんだよ!」
イシェは呆れたように言った。「ラーン、それはただのひび割れじゃないか。それに、古代語なんて読めるわけないだろう」
「読めるぞ!実は俺、最近古代語を勉強してるんだ!」 ラーンの顔は熱を帯びていた。「ほら、テルヘルに頼んで教えてもらったんだ!」
イシェはため息をつき、ラーンの無謀さに手をこまねいていた。しかし、彼の目はどこか輝いており、イシェも少し期待する自分がいることに気づいた。
その時、扉が勢いよく開けられ、テルヘルが入ってきた。「準備はいいか?」彼女は冷めた声で言った。「今日はヴォルダン軍の動きが活発らしい。時間がない」
ラーンの顔は一変し、真剣な表情になった。イシェも緊張した空気に飲み込まれた。彼らは小さな街ビレーを出て、山道を登り始めた。太陽が容赦なく照りつける中、彼らは遺跡へと向かった。小刻みに進む足取り、息遣い、そして沈黙。三人の心にはそれぞれ異なる思いが渦巻いていた。