ビレーの朝露が乾く頃、ラーンはイシェを起こした。「今日はテルヘルのお姉さんが遺跡指定した場所へ行くぞ！大穴発見だ！」と、いつも通り豪語する。イシェは眠い目をこすりながら、「また大穴か…」と呟いた。
「今回は違うって！テルヘルのお姉さん、地図持ってきたんだって。ヴォルダンが昔使ってた遺跡らしい」とラーンは興奮気味に言った。イシェは少し興味を持った。「ヴォルダンの遺跡…どんなものがあるんだろう？」
テルヘルはいつもより早く到着していた。テーブルには粗末な地図が広げられ、赤い印で示された場所があった。「ここはヴォルダンが小作として支配していた地域。そこにはかつて王家の墓があると伝えられている」とテルヘルは言った。ラーンの顔色が明るくなる。「王家の墓なら宝がいっぱいあるかもな！」と目を輝かせた。イシェは地図に目をやった。「小作の記録…あの辺りは貧しい農民が多く住んでいて…」
「気にすんな、イシェ。今回は大穴だ！俺たちはこれから大金持ちになるぞ！」ラーンは興奮して剣を構えた。テルヘルは冷静に言った。「宝探しは後だ。まずは墓を守る魔物との戦いを覚悟しろ」
遺跡は深い森の中にあり、薄暗い通路が続く構造だった。壁には奇妙な模様が彫られており、不気味な空気が漂っていた。ラーンは緊張しながらもワクワクしていたが、イシェは不安を感じていた。「ここ…何か嫌な予感がする…」と呟いた。
突然、通路の奥から咆哮が響き渡り、巨大な影が飛び出して来た。ラーンは剣を抜き、勇敢に立ち向かった。イシェは後方から弓矢で援護した。テルヘルは冷静に状況を見極め、隙を見て魔物に攻撃を加えた。激しい戦いの末、ついに魔物を倒すことに成功した。
しかし、勝利の喜びも束の間。彼らは墓の中心部に着くと、そこには何もなかった。空っぽの石棺だけが静かに置かれていた。「なんだこれは…？」ラーンの顔色が青ざめた。イシェは地図を再度確認し、「小作の記録に…王家の墓は偽りの情報だった…」と呟いた。
テルヘルは冷静さを失わずに言った。「偽りとは、ヴォルダンが隠すために仕組んだ罠だ」と鋭い目で言った。「この遺跡には何か別のものがあるはずだ。小作たちの秘密が隠されている可能性もある」
ラーンは落胆しながらも、テルヘルの言葉に少しだけ希望を見出した。イシェは地図を広げ、再び小作の記録を精査し始めた。「何か…何かあるはず…」と呟いた。彼らの冒険は、まだ始まったばかりだった。