ラーンの重い剣が石壁を切り裂き、埃が舞った。イシェは咳払いしながら「あの奥だと言ってたはずだけど…」と呟く。狭い通路の先には、朽ちた扉が僅かに開いていた。
「よし、俺が先行く!」
ラーンは興奮気味に扉を押し開けようとしたその時、テルヘルが手を止めた。「待て。何か変だ」彼女は慎重に扉の隙間を覗き込んだ。「導線を感じない…」
イシェは首を傾げた。「導線?」
「遺跡に残された魔法の痕跡。まるで…指紋のように。この遺跡には、強力な魔力が宿っているはずなのに…」テルヘルは眉間に皺を寄せた。「何かがおかしい」
ラーンの不穏な予感は的中した。扉を開けた瞬間、激しい風が吹き荒れ、石畳を裂くように闇が渦巻いた。その中心には、赤く燃える巨大な瞳が浮かび上がる。
「何だこれは!」ラーンは剣を構えた。
イシェは恐怖で言葉を失った。テルヘルだけが冷静さを保ち、「逃げろ!」と叫んだ。だが、それは遅すぎた。闇は彼らを飲み込み、三人は絶望的な叫び声を上げた。