ラーンの豪快な笑い声が、埃っぽい遺跡の奥深くまでこだました。
「おいイシェ、見てみろ!これは大物だぞ!」
彼の指さす先には、朽ち果てた石棺が横たわっていた。イシェはため息をつきながら近づき、慎重に石棺の上にある苔むした蓋をそっと持ち上げた。中からは、まるで時間を超越したかのように輝く金色の剣が静かに眠っていた。
「うわっ…」
ラーンの瞳は興奮で輝いていた。イシェも思わず息をのんだ。それは彼らがこれまで見聞きしたどんな武器とも違っていた。剣の表面には複雑な文様が刻まれており、その輝きはまるで生きているかのように脈打っているようだった。
「これは…すごいものだ…」
イシェが呟くと、ラーンは興奮気味に頷いた。
「これでついに大穴が見つかるぞ!この剣を売れば、もうビレーで暮らす必要なんてなくなる!」
だがイシェの表情は曇っていた。
「でも、この剣…何か変だ。」
彼女は剣から感じる不気味なエネルギーを感じ取っていた。まるで、この剣が眠るべき場所から引きずり出されたことで、何かを怒らせてしまったかのような気がしたのだ。
その時、背後から冷たく響く声がした。
「面白いものを見つけましたね。」
テルヘルが鋭い眼光で三者を睥睨していた。その瞳には、剣への欲だけでなく、どこかぞわぞわとさせる不穏な光が宿っていた。
「この剣は、私がもらいます。」
彼女の言葉に、ラーンは一瞬戸惑った。だが、すぐにいつもの豪快な笑みに切り替えた。
「いやいや、テルヘルさん。これは俺たちが発見したんだから、当然俺たちに…」
だが、テルヘルの視線はラーンの言葉に耳を傾けず、剣へと注がれていた。彼女の周りには、まるで影のようなものが渦巻いているようだった。
イシェは背筋がぞっと冷えた。
「何かおかしい…。」
彼女は密かに手を握りしめ、ラーンに小さく頷いた。
専行するべき時が近づいていたのだ。