ラーンの大斧が遺跡の壁を叩き割る音だけが、埃っぽい空間にこだました。イシェは懐中電灯の光を当てながら、崩れた石畳の上を慎重に歩いていた。
「ここか?」
テルヘルが指差す方向には、壁に埋め込まれた金属製の扉があった。複雑な紋様で飾られており、どこか不気味な美しさを感じさせる。
「この扉を開けるには、あの石板の謎を解く必要があるだろう」
イシェは石畳に置かれた、奇妙な図形が刻まれた石板を指さした。ラーンは眉間に皺を寄せながら、石板を眺めた。
「また難しいやつか…」
テルヘルは冷静に言った。
「この遺跡の主人は、封土を守るために多くの試練を設けたようだ。我々はそれを乗り越えて、真の宝に辿り着かなければならない」
ラーンの顔色が変わった。「宝…?」彼の目は輝き始めた。イシェはため息をついた。
「また、大穴の話か…」
テルヘルは無視して石板を見つめた。彼女の瞳には、遺跡の奥深くに眠る秘密への強い執念が燃えていた。それは、単なる財宝を求める欲望ではなかった。ヴォルダンに奪われたものを取り戻すための、復讐の炎だった。
「この扉を開けたら、我々は封土の真実に辿り着けるだろう」
テルヘルの言葉は決意に満ちていた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らはそれぞれの理由で、この遺跡に足を踏み入れた。だが、今は一つの目的のために協力する必要があった。封土の秘密を解き明かすためだ。