ラーンの大剣が遺跡の奥深くにある石壁を叩き割り、埃が舞った。イシェは咳払いをして、「また壊すのか? あれで何か見つかるって思ったのか?」とため息をついた。
ラーンはニヤリと笑った。「ほら、イシェ、お前もわくわくしないか? この奥に何があるか想像してみろ! まだ見ぬ財宝、失われた技術…もしかしたら王家の墓さえあるかもしれないぞ!」
「そんな夢物語を語る暇があったら、まずは今日の食料をどうするか考えないとね」とイシェは冷静に切り返した。
その時、テルヘルが後ろから近づいてきて、「二人とも騒ぎすぎだ。ここには何もない。この遺跡はすでに空っぽだと私は思う」と言い放った。彼女の目は冷たく、鋭い視線で遺跡の奥を見つめていた。
「何だって?」ラーンは驚いた。「そんなはずはないだろう? この遺跡は…!」
テルヘルはラーンの言葉を遮り、「私はヴォルダンに全てを奪われた。だから、この世界にはもう希望はない」と呟いた。「この遺跡も、他の遺跡も、全てが虚しい。そして、お前たちの夢もまた虚しいのだ」
イシェはラーンの顔色を見ながら、テルヘルの言葉の重さに胸を締め付けられるのを感じた。彼女はいつも冷静さを保つように努めていたが、テルヘルの言葉には深い絶望と憎しみが込められていた。その憎しみの源泉は何なのか、イシェは恐る恐る尋ねた。「ヴォルダン…一体何を?」
テルヘルは一瞬、静かに目を閉じ、そしてゆっくりと口を開いた。「私は復讐のためだけに生きている。ヴォルダンを滅ぼすために、どんな手段も厭わない」
ラーンの表情が曇り、イシェの心にも不安が広がった。彼らは遺跡探しの報酬を得ていたが、テルヘルの真の目的は何か、そしてそれは彼らの人生にどのような影響を与えるのか… イシェは未来への不安を押し殺し、冷静に考えようと決意した。
「よし、今日はこれで終わりだ」とイシェは言った。「戻ってから食事でもするか」
ラーンの顔色が少し明るくなり、テルヘルも何も言わずに頷いた。三人は遺跡を後にしたが、彼らの心には重たい影が落とされていた。