ラーンの大柄な体躯とイシェの細い腕が、遺跡の入り口で対比を成していた。薄暗い洞窟への入り口は、まるで二つの異なる世界の境界線のように見えた。
「よし、行こうぜ！」
ラーンはいつものように豪快に笑って、先陣を切って闇の中へ踏み込んだ。イシェは彼を後ろから見つめながら、小さくため息をついた。ラーンの行動はいつも予測不能で、イシェにとってはいつも不安定な足場のように感じられた。
「待てよ、ラーン！」
テルヘルが冷静に警告の声をかける。彼女は洞窟の入口に置かれた石碑を指さしていた。「この記号…ヴォルダン軍で使われていたものだ。ここには罠がある可能性が高い。」
ラーンの顔色が一瞬曇る。彼は戦場での経験から、ヴォルダンの残虐性を知っていた。しかし、すぐにいつもの笑顔を取り戻し、軽々と石碑を蹴飛ばした。
「そんな細かいこと気にすんなって！俺たちには大穴を掘る使命があるんだ！」
イシェはテルヘルの冷静さとラーンの無謀さに挟まれ、いつものように苦渋の表情を浮かべた。彼女は自分の立場を、まるで三つの力によって引っ張られるバランスのように感じていた。
洞窟の中は、湿った土と腐った木の臭いが漂う暗闇の世界だった。ラーンの懐中電灯が照らす範囲は狭く、その先には不気味な影が蠢いているように見えた。イシェは緊張感に満ちた空気を肌で感じ取り、背筋を寒気 пробеく。
突然、床から鋭い音が響き渡り、ラーンが足を取られよろめいた。彼の目の前で、地面が崩れ始め、巨大な穴が開いていく。ラーンの叫び声が洞窟中にこだました。イシェは一瞬の躊躇の後、ラーンの手を掴んで引き寄せた。
「ラーン！気をつけろ！」
テルヘルが冷静に状況を分析し、近くの石柱にロープを結び付け、ラーンを安全な場所に避難させた。イシェは、まるで鏡のように対称的な動きでラーンの危機を救った。
穴から吹き上がる土埃が少しずつ沈んでいくと、洞窟の奥底に広がる遺跡の一部が姿を現した。そこには、黄金色に輝く巨大な宝箱が置かれていた。
「やった！ついに大穴だ！」
ラーンは興奮気味に叫び、宝箱に飛びついた。しかし、イシェは彼の行動を制止する。彼女は宝箱の表面に刻まれた複雑な紋章と、その下に隠された謎の記号に目を奪われていた。
「待て、ラーン…これは単なる宝箱じゃないかもしれない。」