「よし、ここだ!」ラーンの声が響き渡り、イシェはため息をついた。「またか…」 いつも通り、ラーンが遺跡の入口を見つけた瞬間、興奮を抑えきれず、計画性のない行動に出るのだ。
「待てよ、ラーン。あの崩れかけた壁をよく見てみろ。」イシェは慎重に足取りを確かめながら言った。「危険な罠かもしれないぞ。」 ラーンの行動は勇敢だが、短絡的だ。イシェはいつも彼の後を追うようにして、冷静さを保ち、状況を判断していた。
「大丈夫だ、イシェ!俺が先頭切って開けばいいんだ!」 ラーンはそう言いながら、剣を抜いて崩れた壁に歩み寄った。
その瞬間、壁から矢が飛び出してラーンを直撃した。ラーンは驚きの声を上げ、後ずさった。
「ラーン!」イシェは慌てて駆け寄り、彼の傷口を押さえた。「大丈夫か?すぐに包帯を巻かないと…」
「くっ…痛いが、大丈夫だ。」ラーンの顔は青ざめていたが、彼はまだ戦意を失っていなかった。「あの矢…一体どこから飛んできたんだ?」
その時、影が二人を覆った。背後から冷酷な声が響いた。「ようこそ、遺跡へ。私の餌食にでもなってみるか?」
ラーンとイシェは振り返ると、そこで見覚えのある女性が立っていた。黒曜石のような瞳と鋭い眼光を持つ、テルヘルだ。彼女はいつも冷静沈着な態度で、彼らに依頼をこなすように指示する。だが、その裏には何か秘密を抱えているような気がしていた。
「テルヘル…なぜここに?」ラーンの問いに対して、テルヘルは不気味な笑みを浮かべた。「私は、お前たちを利用しているだけじゃないのよ。」彼女はゆっくりと剣を抜いて言った。「そして、この遺跡が隠す真実は、お前たちの想像を超えるものになるだろう…」
イシェはラーンの目をじっと見つめた。いつも冷静さを保つ彼だが、今回は不安を感じていた。テルヘルの言葉に、どこか不穏な予感がしたのだ。ラーンとイシェ、そしてテルヘル。三人の運命が交錯する遺跡の奥深くで、真実は徐々に明らかになる。