ビレーの薄暗い酒場の一隅で、ラーンが豪快に笑っていた。「また大穴だな！」彼の言葉にはいつも通りの自信と、少しばかりの虚 bravado が混じっていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、杯を傾けた。「今回は本当に慎重に行こうよ。あの遺跡は危険だと聞いたことがある」
「大丈夫、大丈夫！俺がしっかり見てるから」ラーンは胸を叩き、大きな声で言った。「それに今回はテルヘルも一緒だぞ！」
テルヘルは静かに酒を飲みながら、彼らを鋭い目で見ていた。彼女はヴォルダンへの復讐心と、そのために必要な資金欲しさに、この遺跡探索を引き受けたのだ。ラーンの無謀さに手を焼いているようにも見えたが、彼の持つ純粋な熱意にはどこか惹かれているようでもあった。
「今回は特に注意深く動かないと」テルヘルは冷静に言った。「噂では、あの遺跡にはヴォルダンが密かに手を回し始めたという話だ」
ラーンの表情が曇った。「ヴォルダンか…」彼の拳がテーブルを叩きつけた。「俺たちを巻き込んできたのは、一体誰なんだ？」
「今はそのことは考えない方がいい」イシェは冷静に言った。「まずは遺跡の中にあるものを見つけ出さないと。そして、それをどうするかも考えなければ…」
彼女の言葉の裏には、いつものように現実的な判断があった。彼らは遺跡から得た遺物を売却することで生計を立てていたのだ。特に近年は、ヴォルダンとの国境紛争が激化し、武器や食料の需要が高まっているため、密売市場が活発化していた。
「そうだ」ラーンもやっと冷静さを取り戻した。「まずは遺跡の中を探してみよう」彼は立ち上がり、テルヘルとイシェに手を差し出した。「準備はいいか？」
三人は互いに手を握りしめ、ビレーの街を後にした。彼らの前に広がるのは、未知なる遺跡への道であり、そして、ヴォルダンとの戦いを予感させる暗雲だった。