ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に酒を飲んでいた。イシェが眉間にしわを寄せながら彼の隣に座り、小さな杯から慎重にワインを味わっていた。「また遺跡に行こうって話してるのか?」
「ああ、テルヘルが新しい場所を見つけたんだって。今回は大物らしいぞ!」ラーンは目を輝かせた。「あの娘の情報は確かだしな。今度こそ、俺たちの運命が開けるかもしれない」
イシェはため息をついた。「ラーン、また同じ夢を見るんじゃないだろうな? いつも大穴の話ばかりで、具体的な計画がないのはいつまで続くんだ?」
「計画なんていらないよ!俺たちには運があるんだ!」ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。「さあ、イシェも準備だ!今日はいい夜になりそうだぞ!」
イシェは諦めたように肩を落とした。ラーンの熱意に押されて、いつも一緒に遺跡へ行く羽目になるのだ。しかし、今回は何かが違う気がした。テルヘルの表情がいつも以上に硬く、言葉にも重みがあったのだ。
「今回は違う」とテルヘルは言った。「今回の遺跡は特殊だ。ヴォルダンとの関わりがある可能性が高い。危険も大きいけど、成功すれば大きな報酬を得られるだろう」
ラーンは目を輝かせたが、イシェは不安を感じていた。ヴォルダンといえば、エンノル連合にとって脅威の大国だ。テルヘルは何を企んでいるのか。イシェは彼女の言葉を疑う気持ちと、ラーンの熱意に巻き込まれていく自分の無力さに絶望した。
遺跡の入口で、テルヘルは三人に小さな袋を手渡した。「これは密令だ。遺跡の中で使う必要がある」と彼女は冷たく言った。「絶対に誰にも見せないように。命に関わるぞ」
イシェは袋を恐る恐る受け取った。その中に何が入っているのか、そしてそれがどのような危険をもたらすのか。イシェは不安で胸が張り裂けそうになった。
遺跡の中へ足を踏み入れた瞬間、イシェは自分の運命を変えるような予感がした。