「よし、今回はあの崩れかけた塔だな!噂によると、中層あたりに何か秘宝が隠されているらしいぞ!」ラーンは目を輝かせ、イシェの制止を振り切って遺跡の入り口へと駆け出した。
イシェはため息をつきながら後を追った。「またそんな安っぽい情報に釣られて…」
テルヘルは二人を見つめ、薄暗い表情で呟いた。「あの塔はヴォルダン軍が一時拠点にしていた場所だ。内部構造は複雑で、罠も多い。油断するな。」
ラーンの興奮も少し冷めたようだった。「そうか…じゃあ、慎重に調査していくぞ!」
遺跡内部は湿り気で充満し、埃が舞っていた。崩れた石柱や瓦礫が道中に散らばり、足元を不確かにしていた。イシェは周囲を警戒しながら、細心の注意を払って進んだ。ラーンは相変わらず先陣を切っており、テルヘルは彼の背後で常に警戒していた。
「ここか…」テルヘルが指差した場所は、塔の中層にある崩れ落ちた部屋だった。そこには石棺が一つ置かれていた。
「まさか…」ラーンの声が震えた。「これが噂の秘宝…?」
イシェは慎重に石棺に近づき、蓋を開けようとした瞬間、床から鋭い剣が飛び出した! ラーンは咄嗟に身をかわしたが、剣は彼の腕をかすった。血が滲み出した。
「罠だ!」イシェの声が響き渡り、三人は慌てて部屋の周囲を警戒した。しかし、もう遅かった。壁から矢が放たれ、ラーンは胸に矢を受けて倒れた。
「ラーン!」イシェが駆け寄り、彼の傷口を押さえた。「大丈夫か!?」
ラーンの顔色は青ざめていた。「くそ…あの男…」彼は息も絶え絶えに言った。「あの塔を調査していた時…ヴォルダンの兵士に襲われたんだ…あの男…」
イシェはラーンの言葉を聞いて、背筋が凍りついた。ヴォルダン。あの宿敵の名前を聞いた瞬間、テルヘルの表情が曇った。
「ヴォルダンか…」彼女はつぶやいた。「ここで待ち伏せをしていたとは…」
イシェはラーンを支えながら立ち上がった。「逃げよう!この場所から!」
しかし、部屋の入り口には既に数人の影が立っていた。黒装束に身を包んだヴォルダンの兵士たちだ。彼らは冷酷な笑みを浮かべながら、三人にゆっくりと近づいてきた。