ラーンがいつものように大声を張り上げて遺跡の入り口に立っていた。イシェはため息をつきながら後ろから続く。
「また騒ぎ立てるなよ、ラーン。あの奥には何があるのかも分からないのに。」
「いや、でもさ、今回は違うぞ！この遺跡、なんか雰囲気が違うんだ！」
ラーンの目は輝いていて、いつものように興奮気味だった。イシェは彼の熱意に圧倒されつつも、冷静さを保とうとした。
「雰囲気？それじゃあ、何もわからないじゃないか。」
その時、背後から声がした。「そうだな、イシェが言う通りだ。雰囲気だけでは何も始まらない。この遺跡を解明するには、計画的なアプローチが必要だ。」
テルヘルが近づいてくる。彼女はいつも通りに冷静で、鋭い目で遺跡を見つめている。ラーンの熱意を冷やすように、彼女は続けた。
「今回の調査は慎重に進める必要がある。特に、この遺跡周辺ではヴォルダンの活動が活発になっているという情報が入っている。」
ラーンの顔色が少し曇った。彼はヴォルダンとテルヘルの過去について、詳しくは知らなかったが、彼女の強い憎悪を肌で感じていた。
「わかった。気をつけろよ、イシェ！」
ラーンは剣を構え、遺跡の中へと踏み入った。イシェは彼を見つめながら、小さくため息をついた。テルヘルは彼の肩に手を置くと静かに言った。
「イシェ、お前には家長のような冷静さと判断力が求められる。ラーンの熱意を抑えるのは難しいかもしれないが、彼を導いてほしい。」
イシェは頷き、遺跡へと続く道を進んだ。彼らの後ろには、かつてヴォルダンから全てを奪われた女の影が長く伸びていた。