ラーンの粗雑な剣振りが埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと続く通路を照らす焚き火の光を乱した。イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の手がかりとなる石板を慎重に拭き取っていた。「ここは本当に安全なのかしら?」
「大丈夫だ。あの石板には呪文なんて書いてないだろ?ただの警告だ」ラーンは豪快に笑って言ったが、イシェは彼の背筋にそびえ立つ巨大な石柱に視線を向け、不安を募らせた。
「この遺跡は一体何なのかしら…」イシェの呟きに、テルヘルが鋭い視線でラーンを睨んだ。「お前はあの石板の意味を理解していないのか?」
ラーンの表情が曇った。「あの記号…どこかで見たことがある気がするんだけど…」
「それは当然だ」テルヘルの声は冷たかった。「その記号は、かつてこの地を支配した王家の家紋だ。そしてこの遺跡は、その王家の墓だと私は確信している」
イシェの心臓が激しく鼓動し始めた。王家の墓…それは莫大な富と強力な遺物があることを意味する。しかし同時に、恐ろしい呪いも秘めている可能性もある。
「王家…」ラーンは目を丸くした。「まさか、俺の祖先に関係あるんじゃないのか?」彼は興奮気味に自分の家系図を思い浮かべた。
イシェはラーンの無謀さに呆れながらも、彼の熱意に心を揺さぶられた。
テルヘルは冷酷な微笑みを浮かべながら言った。「王家の墓を探し出すことは、我々にとって大きな一歩となるだろう。そして、ヴォルダンへの復讐にも近づくはずだ」