「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂じゃ、地下に何かあるらしいぞ」ラーンが目を輝かせた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「そんな噂は聞いたことがないわ。それに、あの塔はヴォルダン軍が以前攻めてきてから崩壊が進んでる。危険すぎるんじゃない？」
「大丈夫だ。俺が先陣きって安全を確認するから」ラーンは自信満々に笑った。イシェはため息をつきながら、「いつも通り、考えなしだな」と呟いた。だが、ラーンの熱意に押されるように、結局塔へ向かうことになった。
テルヘルは二人の様子をじっと見ていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンに関する情報だった。かつてヴォルダンに全てを奪われた彼女は、復讐のためには手段を選ばない覚悟でいる。そして、この遺跡探検を通して何か手がかりを得られるかもしれないと期待していた。
塔の入り口付近では、崩れた石が散乱し、不気味な静寂が広がっていた。ラーンは剣を構え、慎重に足を踏み入れた。「よし、安全みたいだ」ラーンの声が響き渡った。だが、その瞬間、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちてしまった。
「ラーン！」イシェが驚いて叫んだ。穴の奥からは、かすかな光が見えた。「大丈夫？何かある？」テルヘルが冷静に問いかけた。しばらくすると、ラーンの声が聞こえてきた。「ここは…地下通路みたいだ。なんか宝箱があるぞ！」
イシェは安堵した。「よかったら」と呟きながら、テルヘルと共に穴の入り口まで駆け寄った。だが、その時、テルヘルの表情が変わった。彼女はゆっくりと剣を抜いた。
「お前たちには用はない」
イシェは驚き、ラーンは何を言っているのか理解できなかった。「テルヘル、何をするつもりだ？」ラーンの声が響き渡る。テルヘルは冷酷な表情で答えた。「私は宣誓した。ヴォルダンに復讐するためなら、どんな手段も使う」
イシェは恐怖を感じながら、剣を構えた。ラーンは立ち上がり、テルヘルの前に立った。「そんなことするな！俺たちは仲間だ！」
だが、テルヘルは聞く耳を持たなかった。彼女はラーンの言葉に耳を傾けず、ただ復讐の念に突き動かされていた。