「よし、今日はあの崩れた塔だな！噂によると、奥深くに王の墓があるらしいぞ！」ラーンの声が、ビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはいつものように眉間に皺を寄せた。「またそんな話？ そんな場所に何があるって、大穴が見つかるわけでもないし…」
「おいおい、イシェ！ いつまでもネガティブシンキングじゃ何も始まらないぞ！」ラーンはイシェの頭を軽く叩きながら笑った。だが、イシェはラーンの言葉に耳を傾けず、テルヘルの様子を伺っていた。
テルヘルはいつもと変わらず冷静だった。彼女は鋭い目で地図を広げ、指で塔の位置を示す。「情報によると、入口にはトラップが仕掛けられているらしい。注意深く進まなければ」彼女の視線は冷酷で、まるで獲物を狙う獣のようだった。イシェは背筋が寒くなった。
遺跡の入り口に差し掛かった時、ラーンはいつものように剣を抜いた。「よし、行くぞ！」彼の目は輝いていた。だが、イシェは何か不吉な予感を感じた。
塔の中は薄暗く、埃が積もっていた。足元の石畳は崩れかけており、一歩踏み出すごとに不安定な音が響いた。ラーンは先頭を歩き、イシェとテルヘルは後を続いた。
しばらく進むと、壁に奇妙な模様が刻まれていた。イシェは一瞬目を疑った。「これは…？」「古代の呪文だ」テルヘルが答えた。その瞬間、床から鋭い棘が飛び出し、ラーンを襲った。
ラーンの叫び声が響き渡る中、イシェは咄嗟に彼を引き寄せた。棘はラーンの腕を掠めただけで、大怪我には至らなかったが、血がぼろぼろと流れていた。
「くそっ！」ラーンは怒りを露わにした。だが、イシェは冷静さを保った。「落ち着け！ これは罠だ。誰かが私たちを殺そうとしている」
テルヘルは鋭い目で周囲を見回した。「確かに、誰かがこの遺跡に仕掛けた罠だ。しかし、なぜ？」
その時、塔の奥から声が響き渡った。「ようこそ、侵入者たち。私の計画の一部として、お前たちはここに導かれたのだ」
その声は冷酷で、まるで宣告のようだった。イシェは背筋が凍りついた。誰かが彼らを狙っている…そして、その目的は何なのか？ 謎は深まるばかりだった。