「よし、ここだな！」ラーンが興奮した声で言った。イシェは眉間に皺を寄せて地図を広げた。「あの崩れた塔の奥か…確かに遺跡らしい構造をしているけど、何か変だぞ」。
「変だって？宝の山が見つかるのは変じゃないだろう？」ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。いつも通り、彼の脳内は夢と希望でいっぱいだ。だが、イシェはそんな彼を憎めなかった。
テルヘルが鋭い視線で二人を見渡した。「無駄な議論は後回しだ。準備を整えろ」。彼女の言葉にラーンは「おう！」と元気よく返事をして、装備を確認し始めた。イシェはテルヘルの表情に何かを感じ取ったが、読み解くことはできなかった。
崩れた塔の内部は薄暗く、埃っぽい空気が流れ込んでくる。足元には朽ち果てた石畳が広がり、壁面には奇妙な模様が刻まれている。「ここ…どこかで見たような…」ラーンの呟きが響いた。イシェは背筋が寒くなるような予感を抱いた。
深く進むにつれて、空気が重くなり、不気味な静けさが広がっていった。やがて、彼らは大きな部屋にたどり着いた。中央には巨大な石棺があり、その周りを奇妙な彫刻が囲んでいる。「これは…一体何だ？」ラーンの顔色が変わった。イシェも言葉を失った。
その時、石棺の蓋が開き、中から黒い影が立ち上がった。それは人型の姿をしているが、全身を漆黒の鎧で覆われていて、顔は全く見えない。
「客人…ようこそ」
低く響く声にラーンとイシェは言葉を失った。テルヘルだけが冷静さを保ち、剣を構えた。「何者だ？この場所とは一体…」
影はゆっくりと近づき、手を差し出した。「我々は…」その声はまるで氷のように冷たかった。「汝らを待っていた」。