ラーンの巨大な剣が遺跡の奥深くにある石棺を粉砕した。埃が立ち込め、咳き込むイシェを尻目にラーンは興奮気味に石棺の中をのぞきこんだ。「おお！何かあるか？！」
「待て、ラーン。まだ確認が終わっていない」イシェは慎重に石棺の周囲を観察する。「何か仕掛けがあるかもしれない」
「そんなの気にすんな、イシェ！俺が守るから！」ラーンの豪快な笑いが響き渡る。テルヘルは冷静に石棺の中身を覗き込んだ。「どうやら装飾品が入っているようだ。価値のあるものだが、期待したほどのものではない」
ラーンの顔色が一瞬曇った。「そうか…。」
イシェは彼の手を軽く叩いた。「今日はもう日が暮れそうだ。今日はこれで終わりにしよう」
「おいおい、まだ探せば何かあるかもよ！ほら、イシェもワクワクしないのか？」ラーンは興奮気味に言ったが、イシェの目はどこか冷めていた。テルヘルは彼の様子を見つめ、わずかに唇を動かした。「準備はいいか？」
夜闇に包まれたビレーの酒場で、3人はテーブルを囲んでいた。ラーンの豪快な笑い声とイシェの淡々とした言葉が交錯する中、テルヘルは静かにワイングラスを傾けていた。彼女の視線は遠く、どこか別の場所に固定されているようだった。
「あの遺跡には何か隠されたものがある気がするんだ」ラーンが熱く語った。「俺の直感がそう言ってる！いつか必ず大穴を見つける！」
イシェは苦笑した。「ラーンの直感はいつも外れてるだろ」
「違うんだ、今回は違う！」ラーンはテーブルを叩き、目を輝かせた。「あの石棺…何かを感じたんだ。あの装飾品…ただの飾りじゃない、何か重要な意味があるはずだ」
テルヘルがゆっくりと口を開いた。「確かに、あの遺跡には何かがあるかもしれない。だが、それは簡単に見つかるものではないだろう」彼女の目は鋭く光り、「そして、それを手に入れるためには、我々の力だけでは足りないかもしれない」
ラーンの興奮を冷ます言葉だった。イシェは眉間に皺を寄せた。「どういうことだ？」
テルヘルは静かに言った。「実力…我々には足りないものがある。次の目標を定める必要がある」彼女は立ち上がり、テーブルに置かれた地図を見つめた。「ヴォルダンとの国境に近い遺跡群…そこには、我々が求めているものがあるかもしれない」
ラーンとイシェの視線が地図に集まった。そこに描かれていたのは、未知なる危険と、希望に満ちた可能性。3人の運命は、この地図と共に動き出す。