ビレーの夕暮れはいつもより早く訪れた。空は燃えるような赤色に染まり、影が街を呑み込むように伸びていく。ラーンはイシェの眉間に刻まれた皺をじっと見つめていた。
「また失敗か?」イシェは疲れた声で言った。「今日は特に何も見つけられなかった。あの遺跡は本当にただの空洞だったのかもしれない」
ラーンの胸にも虚しさが広がっていく。彼らは今日も長時間を費やして遺跡を探検したが、収穫はゼロだった。大穴を夢見るラーンにとっては大きな痛手だ。
「いや、違う」ラーンの顔色が少し明るくなる。「あの壁画…何か意味があったはずだ。あの奇妙な記号…もしかしたら、他の遺跡と関連があるかもしれない」
イシェはため息をついた。「ラーン、また妄想が始まるんじゃないか?あの記号はただの模様にしか見えなかったよ」
「でも…」ラーンの目は輝いていた。「あの記号が示す場所には何かあるはずだ。僕にはそう感じるんだ!」
その時、テルヘルが近づいてきた。彼女はいつもと違う表情をしていた。硬い顔つきにわずかな笑みが浮かんでいる。
「皆さん、今日はお疲れ様です」テルヘルはゆっくりと話し始めた。「実は、今日の遺跡探検で思わぬ収穫がありました」
ラーンとイシェの視線がテルヘルに向かう。彼女の言葉には確信が込められていた。
「あの遺跡の奥深く、誰も気づかなかった場所から…あるものを発見したのです」テルヘルは小さな革袋を取り出し、慎重に開いた。「これは…」
袋の中から現れたのは、小さな水晶だった。それは淡い緑色をしており、内部に複雑な模様が浮かび上がっていた。
「これは…」イシェは目を丸くする。「実りの結晶…!」
伝説の遺物「実りの結晶」。その力は未知数だが、あらゆるものを豊かにすると言われている。
ラーンは興奮を抑えきれなかった。「やった!ついに大穴が見つかったんだ!」彼はテルヘルに抱きつき、喜びを爆発させた。イシェも驚きと喜びを隠せない表情で、水晶を見つめていた。
テルヘルは微笑みながら言った。「これはまだほんの始まりです。この水晶が示す場所には、もっと大きな実りが眠っているはずです」彼女の目は未来に向かって輝いていた。