「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。イシェ、地図を確認してくれ」ラーンが力強く言った。イシェは薄暗い tavern のテーブルに広げた古びた羊皮紙を指でなぞりながら、「ここは以前にも探索した場所じゃないか? 何も無かったはずだ」と眉間にしわを寄せた。「今回は違うんだ。あの時、入り口を見落としていただけさ。きっと何かあるはずだ。大穴が眠っている可能性もある!」ラーンの瞳は興奮で輝いていた。イシェはため息をつきながら、地図をラーンに渡した。「わかった、わかった。私はいつも君のお守り役みたいだな」。
彼らはテルヘルと共にビレーの街を出発し、険しい山道を登り始めた。テルヘルは背の高い黒髪の女性で、鋭い眼光と冷静な表情が印象的だった。彼女は常に剣を携帯しており、その存在感は周囲に緊張感を漂わせていた。「今回は何か収穫があることを期待している」テルヘルは低い声で言った。ラーンの無邪気な冒険心とは対照的に、彼女の目的は明確で冷酷だった。ヴォルダンからの復讐を果たすため、彼女はどんな手段も辞さない覚悟だった。
崩れかけた塔にたどり着くと、ラーンは興奮気味に内部へ駆け込んだ。イシェは彼を止めようとしたが、ラーンの勢いは止まらず、結局テルヘルと共に塔の中へと続く階段を上った。塔内部は暗く湿り気があり、埃と石灰の臭いが漂っていた。崩れた壁や床から伸びる蔦が、時間の流れを感じさせた。
「ここだ!」ラーンが叫んだ。彼は壁の一部を押し開け、その奥にある小さな部屋へと入っていった。イシェもテルヘルも後ろをついていった。部屋の中央には石の祭壇があり、その上に埃まみれの宝箱が置かれていた。
「やった!ついに大穴だ!」ラーンの目が輝き、宝箱に手を伸ばした。しかし、イシェは彼を制止した。「待て、ラーン!何か罠があるかもしれない」
イシェが慎重に宝箱の周囲を観察すると、床に埋め込まれた小さな石板を発見した。石板には複雑な模様が刻まれており、触れると発光した。イシェは警戒しながら石板に触れようとしたその時、部屋の中央から轟音が響き渡り、床が激しく揺れ始めた。
「何だこれは!?」ラーンがよろめきながら叫んだ。その時、祭壇の奥壁が崩れ落ち、そこから眩い光が放たれた。光の中に浮かび上がるものは、宝箱ではなく、巨大な水晶だった。水晶は複雑な模様で覆われており、その中心には pulsing するように赤い光が宿っていた。
「これは…!」テルヘルは目を丸くして呟いた。「伝説の宝石『紅蓮の涙』だ!?」